613人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
「快晴だ」
「そうだね」
「今日の弁当にいなり寿司が入ってるにジュース一本」
「保育園の時からじゃんそれ」
自転車のタイヤにチェーンを掛け終えて、いつもより大きめの弁当袋を籠から取る。ハルは欠伸をしながら青い空を見上げ「暑くならなきゃいいけどなー」と呟いた。
制服姿の生徒はおらず、代わりにジャージを着た人々がたくさん見える。グラウンドには白いラインがくっきりと引かれていた。
――今日は、高校の運動会だ。
「おっはよーくるみ!」
「おはよー。あ、髪結ってる」
教室に入ると、髪を結っている亜美が鏡をガン見していた。机上には櫛やらヘアピンやらヘアスプレーやら色々と散らばっている。他の女子たちの机上もそんなかんじだ。私は髪は肩あたりまでなので結う必要はない。下手だし。鞄を置いて、日焼け止めクリームを取り出した。
「ねえねえ。ハルくんと王子って同じクラスでしょ?何組なの?」
「……その王子ってやめなよ。確かD組」
鏡を見て前髪を触っている亜美の横で何度か振った日焼け止めクリームのフタを取り外して、クリームを手に出した。日焼け止めの匂いは好きになれないんだよなぁ。
亜美は上条くんのことを王子と呼ぶ。毎回やめたらと言うが、やめる気はさらさらないらしい。
最初のコメントを投稿しよう!