運動会。

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「何の競技でるの?」 「知らない」 「今日さー、話しかけてよ!んで、私のこと紹介して」 鏡を見ていたはずの亜美は、気づけば私にものすごく顔を近づけていた。近い。逆に私がのけ反る。「亜美、彼氏いるじゃん」「それはそれ、これはこれじゃーん」人差し指を立てて威張るように言う亜美にどれはどれよ、と首を傾げた。 開会式まで残り十五分になったところで、私と亜美は外に出て、グラウンド脇にクラスごとに準備された控え場所に向かった。控え場所と言っても大きなブルーシートが敷かれてるだけだけど。 開会式の前に入場行進があるので、荷物を置いてトラックに出て指定の場所に並ぶ。みんなテンション高いなぁ、と思いながら私の前に立って雑談をしている女子二人の背中を見ていたら、「あーきたきた」「何君だっけ?上条くん?」「うん!王子だよ王子!遠くから見ても超かっこいい!」会話の内容が耳に入ってきた。 少々気になる固有名詞があったけど、気にしないでおこう。顔をそっちに向けることはしなかったけど、彼が遠くても目立つのは当たり前だろうなと思った。きっと今日の彼は、注目度ナンバーワンなんじゃないだろうか。 あ、でも、上条くんの運動神経ってどんなものなんだろう。ハルに訊いたら『あいつは帰宅部』と言っていた。小さい頃に上条くんが、怖くて木登りが出来ない、と泣きそうな顔で言っていたのを思い出した。
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