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暗くて良く見えないけど、物音はそっちからしているらしかった。好奇心か何かに負けた私は、そっと用具室に近づいて、少し開いている扉の隙間からそっと中を覗く。
……あれ?
直後、私は眉間に皺を寄せた。
暗い用具室の中には誰の姿も見当たらなかったのである。……そんなはずないでしょ。自分にそう言い聞かせて、生唾をのみこんだ。それから扉の隙間を広げて完全に用具室の中に入ってしまった(ほぼ無意識だった)。
――やっぱりいない。何だか急に怖くなって、私は用具室から出ようとしたら、「え、」腕を後ろに力強く引っ張られた。バランスを崩して後ろに転びそうになったが、跳び箱に背中をぶつけることでそれを回避した。背中は痛いけど。
腕は相変わらず掴まれたままであることに気づいた私は、驚きで隠されていた恐怖感が一気に戻ってきて、身体に力を込めると、
「くるみさん、俺です。龍一です」
耳元で囁かれた。
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