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「ちょっ、と……っ、」
私が少し上半身を捩ろうとすると、「お願いだから静かにして」低く真剣な声でそう囁かれた。首元に私のではない髪の毛が触れてくすぐったいし、そこから熱を帯びるようだった。
どくどく、と激しく動く心臓がバレないように身体を縮こめて言われるがままじっとしていると、誰かが体育館に入ってきた。
「いなくない?」
「えー、体育館にいったってきいたのに……」
「戻る?まぁどうせグラウンドに行けば絶対会えるし」
「一緒にお昼食べたかったのにー。いこっか」
数人の女子はそう会話をすると体育館を出て行った。体育館と用具室は再び静寂に包まれる。
「……はぁ」
数秒後、後ろにいた上条くんが息を吐いて脱力したように私の首元に額をくっつけてきた。
いやいや、おかしいでしょうこの状況。ぞわぞわと鳥肌がたつ。「か、上条くん……?」力を振り絞って出した声は上擦っていて、滑稽だと思った。
上条くんは体勢をそのままにしてゆっくりと口を開いた。
「上級生に追いかけ回されてて隠れてたんです。すごい最近しつこくて」
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