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「追いかけ回されてるの?」
「なんか最近よく話しかけられて。途中まで一緒に帰ろうとされたり。今日はいろんな人に写真撮られるし……。あ、くるみさんなら大歓迎ですよ?」
「……」
何も言わない私の後ろで上条くんは大きく息を吸ったかと思うと。
「あの……、抱き締めてもいいですか?」
気付けば私はものすごい速さで立ち上がっていた。後ろを振り返ると、額を押さえて悶絶する上条くんの姿が視界に入ってきてとりあえず一言、ごめんね、と言っておいた。上条くんは右手で顎を押さえたままゆっくりと立ち上がると、「だ、大丈夫です……。はははは……」そう言ってひきつった笑顔を見せてきた。
「グラウンドに戻りますか」
「うん」
「いきましょうか」
私と上条くんはなんとも言えない空気の中、用具室を後にした。
私と上条くんは、どこを歩いていても視線が突き刺さるようだった。玄関で先にスニーカーに履き替え終えて扉の前で待っていた上条くんの元に私も行こうと立ち上がると、「龍一くん!」外から三人の女子が上条くんの元へと駆け寄ってきた。
「……何」
「この子がさー、写真一緒に撮りたいって言ってて――」
本当にモテるんだなぁ、とその場に立ったままみていたら、上条くんが何も言わずに私に視線を向けてきた。
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