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上条くんの真っ直ぐな視線から逃げるように下を向く。少しばかり汚れたスニーカー。まぁ二年履いてるし。
「龍一くんは、次何の競技でるの?」
「俺はあと、リレーと綱引き」
「リレーなら私も出るよー!何出るの?」
「男女混合」
顔をあげると、楽しそうに話す彼女たちの中で、上条くんも笑っていた。それを見た瞬間、ひどい疎外感と苛立ちを覚えた。
――何で私、こんなところに突っ立ってるんだろう。
彼女たちの高い声が耳障りで、無意識に強く握りしめていたペットボトルがパキっと鳴った。私はペットボトルに一度目をやった後、盛り上がりをみせるそっちの人たちには目もくれずに玄関を出た。
……暑い。私は重い足を動かして控え場所に戻ろうと道を歩いていると、ぽんぽんと肩を叩かれた。力無く振り向くと、ハルがアイスを持って立っていた。私はしばらくアイスを凝視したあと、暑さのせいで上手く回らない頭を回転させ、やっと口を開いた。
「……どうしたの」
「んー?見かけたから」
「アイス」
「うん」
「アイス」
「奢ってもらった。高跳びで良い記録残したから」
「アイス」
「あげないよーん」
私はぎろりとハルを睨みつけ前を見て再び歩き出すと「龍一は?」と訊かれ、
「知らない。女の子の相手で忙しいんじゃない」
可愛さの全くない言葉を返した。
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