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リレーで走っていた上条くんは足が速かった。ハルも速かった。無駄に騒がれて、私のテンションは急降下していたけど、綱引きで三年生を負かして優勝し、良い気分で運動会を終えた。
解散してみんなが帰る中、私も自転車置き場に行くと「くるみさん!」後ろから呼び止められた。この声は……と、立ち止まると、「良かった。見つけた」上条くんが私の横まで走ってきて呟くように言った。
「一緒に帰りませんか?」
「……私と?」
「はい」
当たり前かのように頷く上条くんに私はどう反応すればいいか分からなかった。キョロキョロと辺りを見渡すもハルの姿はない。上条くんはそれを察したのか「ハルはどっかの先輩に捕まってました。部活の勧誘で」そう言って一度玄関を見た。
「…………」
この状況からはすごく断りにくくて、結局私は首を縦に振ってしまった。
上条くんは自転車をまだ買っていないらしく、徒歩だったので歩いて帰ることになった。私の自転車は上条くんが、俺が押していきます、ときかなかったのでお言葉に甘えさせてもらった。
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