運動会。

11/12
613人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
自転車のチェーンが回る音がする。会話がうまいこと続かない私達には、度々沈黙が訪れた。 多分その原因は私にある。うん、とか、そうだね、などといちいち会話を断つような反応しかしないからだ。――緊張しているせいで。 上条くんと学校の廊下で会話するだけでもいつも緊張するのに、こうして結構長い時間を隣で歩きながらという状況に、私は今までよりもダントツで緊張していた。 と、上条くんの携帯が鳴った。すみません、と言い、器用に片手で自転車を押しながら、ジャージのポケットから携帯を取り出す。 「もしもし……うん。うん、帰り。――え?打ち上げで焼き肉?……は?今から?」 上条くんは眉間に皺を寄せて「また後で連絡する。切る」淡々と言うと、携帯をポケットにしまった。最後、明らかに電話の向こうで呼び止めてる声がしたけど、上条くんは気のせいですよ、と爽やかな笑顔でそう言った。 「お昼はすみませんでした」 「……あぁ、うん……」 正直いうと、用具室のことなのか玄関でのことなのか分からなかった。でも、玄関でのことは私が勝手に苛ついただけじゃないかと思った。 「……上条くんはモテるね本当に」 「…………嬉しくないですよ」
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!