再会。

3/10

613人が本棚に入れています
本棚に追加
/199ページ
音がしたのは桜の木からだった。風そこまで強く吹いてないのになぁ、と思いつつ眉間に皺を寄せて、無意味に幹を睨みつけた。 今、大事なところなんですよ!新しい青春の一ページをここから――……。 私は桜の木から彼に視線を戻して、目を丸くした。彼はギョッとした表情で桜の木の一点を見つめていたのだ。何か変な動物がいるのだろうか。 「あの、」私が口を開いた瞬間、先程よりももっと大きなガサガサ音がして、私は顔をあげた。そして直後、信じられない光景が――。 「っと」 木の中から人が現れたのである。その人は私の目の前に飛び降りて地面に足を着いた。固まる私。彼も多分そう(彼は降りてきた人と位置的にかぶった)。その人は手についた土埃を払った後、すくっと立ち上がって私を見た――目があった。 綺麗だ、と思った。顔は今まで出会ったどの異性よりも整っていて。蜂蜜色に染められた髪がその顔と白い肌の美しさを際立たせていた。 妖精か?桜の妖精?木の中からいきなり現れるし。あ、でも同じ制服だ。まさか、幽霊?そんな七不思議うちの学校にあったっけ。ていうかめちゃくちゃ見られてる気がする。……穴開きそう。 妖精さん(仮名)はしばらく私を見つめてきたあと、形のいい薄い唇を動かした。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

613人が本棚に入れています
本棚に追加