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心底苦労しているかのように溜め息まじりに言って首を振った。モテるという誉め言葉にそんな反応が出来る人なんてそうそういないだろうにと思う。
「上条くんはどこに住んでるの?というか北海道からみんなで引っ越してきたの?」
「違いますよ。一人暮らしです。俺だけこっちに来ました。最初は反対されましたけど、地元の高校よりこっちの方が偏差値高いし、隣の市に親戚が住んでて。意外とすぐ了承もらえました」
「へえ」
「でも本当の目的は、くるみさんに会いたかったからですよ?」
上条くんはさらりとそう言って、小さくふわりと笑った。その笑顔から逃げるように目を逸らして、足元から伸びる自分の影に視線をやった。
一人暮らしをしてまでここを受験しようとした行動力は本当にすごいと思う。……受験した理由には触れないでおく。
結局、家の前まで送ってもらった。上条くんは何かを言いたそうにしていたが、数分前から頻繁に携帯のバイブが鳴っていたし、それを上条くんはひたすら無視していたので、私がいい加減に出なさい、と言うと上条くんは小さく頷き「今日はゆっくり休んでください」そう言っていなくなった。
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