休日。

4/8
前へ
/199ページ
次へ
あろうことか上条くんは部屋に戻るのではなく私の隣に座った。お茶のペットボトルをテーブルに置いて、笑いながら「ハルだと思いました?」言った。私はさっきの恥ずかしいミスを思い出し、顔を赤くして頷いた。 「ハルは?」 「ゲームに夢中で」 あの馬鹿――客に飲み物を持ってこさせるなんて失礼すぎる。眉間に皺を寄せて、ごめんなさいね、と呟くと、上条くんはクスクス笑って首を横に振った。蜂蜜色の髪が揺れる。 「いいんです。こうしてくるみさんと会えたし、寝顔もちょっと見れたし」 「っ、」 なんで心臓に悪いことを簡単に言ってのけるのか。しばらく視線をさまよわせて俯くと、 「――くるみさん」 低い声がした。恐る恐る顔をあげると、綺麗な目が私を射抜くように見ていて、目があった瞬間、何故か逸らせなくなってしまった。 上条くんは左手をソファに押し付けて、少し身体を私の方に寄せてきた。ギッとソファが唸るように鳴る。――近い。右肩が触れそうで、私の心臓が激しく動いているのがバレそうで怖い。 上条くんは真顔で口を開き、「上条くんは嫌です」ポツリと言った。
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

613人が本棚に入れています
本棚に追加