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「……やっと会えた」
「…………え?」
目の前の妖精さんの言葉に、私は素っ頓狂な声と間抜け面をお見舞いしてしまった。妖精さんは口元を押さえてクスクスと笑い、変わらないなぁ、と呟く。
さっきからこの妖精さんは、何を言っているんだろう(妖精さんとか言っている私の立場もだけど)。というか、明らかに私と面識がある前提で話を進めてるよね、この人。
まさかと思って左右後ろを確認したが、誰もいなかった。人違いしているのかもしれない。
私はおそるおそる妖精さんを見て「あの、人違いじゃないでしょうか……?」と言うと、目の前の彼は眉間に皺を寄せ、首を傾げて私の顔を凝視してきた。
「っ、」
私は彼とまともに目を合わせることもできず俯いてしまった。人に顔を見られることがこんなにも恥ずかしく、心臓に悪いということを知ったのは初めてだ。
「何年待ったと思ってるんですか?」
低い声がじわりと染みるように聞こえてきたと思ったのも束の間、ふわりと甘い香りが鼻を掠めると同時に、私の目の前は真っ暗になった。
私は、妖精さんに、抱きしめられていた。
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