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「姉ちゃん怒らすなよージャイアンよりはるかに怖いんだから」
「何か言った」
「なんでもないでーす」
ハルはチョコ棒美味しいなぁ、と悠長に言いながらごく自然に私と距離を置いた。じろっとハルを睨んでから視線を横にやると、龍一は頬を自分の手で押さえ突っ立っていた。
「あー……、ごめんね。ちょっと反射的に……」
「いいんです、いいんです。むしろ嬉しいですから」
「……」
龍一はニコニコとそう言って殴られた頬をさすった。端から見て聞けば、完璧マゾ発言である。
いつの間にかチョコ棒を食べ終えたハルは、背筋と腕を伸ばした。
「さーて、そろそろ帰るか」
屋上にいる私たち三人を夕日が照らしてくる。私たちは放課後、屋上にいることが日課になった。龍一の強い希望(最早強制)で。誰もいないからこそ、私は龍一のスキンシップに、まだ耐えられるのである。
私たちはそれぞれ通学用の鞄を持ち、屋上を後にした。階段を降りて玄関に向かう。私だけ学年が違うので、ちょっとだけ2人と離れ、自分の下駄箱から靴を取りだそうとしたら、
「――きたっ」
そんな声と同時に駆けていく足音がした。
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