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私はチラリと男を見てから、「ちょっと来て」ハルの腕をひっつかみ引き寄せた。
「誰なのあの人」
「友達」
「同級生?なんか彼、変なんじゃないの」
「変じゃない……いや、変かも」
私はハルに先程のことを軽く説明した。ハルは目を丸くして「姉ちゃんに告白する物好きがいんのか」と言ったので、肘鉄をくらわせておいた。
ハルは眉間に皺を寄せて脇腹をさすりながら「りゅういちー?」と言い放った。「りゅ、りゅういち……?」知らない名前に首を傾げた私の後ろからあの男が「どうしたの?さっきから二人してコソコソと」蜂蜜色の髪を揺らして回り込んできた。すかさず距離をとる私にまた悲しそうな目を向けてきた。……その目、やめてほしい。
「龍一くん、君はこの人に自己紹介をしましたか?」
小学校の先生みたいな口調でハルが訊くと、男は「……してない」肩を竦めた。してやってくれ、と言うハルに渋々といった感じに頷いて、男は私に視線を寄越した。ドキリとして背筋を伸ばす。
「……龍一です。上条龍一。ハルと同じ歳で一年です」
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