再会。

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「…………はじめまして。ハルの姉の渡辺くるみです」 私は軽く頭を下げると、ハルが口元を押さえて、くくく、と笑い出した。 「……何笑ってんのよ」眉をつり上げてハルを睨むと、ハルは上条くんを指差した。それにつられて私も彼に目を向けたら、上条くんは膝に手をついてうなだれていた。ぶつぶつと何か言っていたので耳を澄ますと、「はじめまして……はじめまして……ハジメマシテ……」と呪文のように繰り返していた。若干引いてしまう私。 私は何も言わずにいると、ハルが上条くんの肩をポンポンと叩いて慰めた。 「まあまあ昔のことだし。気にすんなって……ぐふっ」 弟よ……そこは堪えるべきだ。上条くんはハルを一瞥してから息を大きく吸った。 「くるみさん」 「……はい」 「俺は、俺達は会ったことがあるんです。覚えてないですか……?」 顎をひいて少しばかり恥ずかしそうに言う上条くんに首を傾げる。すると、上条くんはまたうなだれてしまった。何だかさっきから私は、彼のことを悲しませている気がする。いや、悲しませている。
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