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「龍一、諦めろ。姉ちゃんの記憶力なめんな。乏しい意味で――っい゙」
真顔で言うハルの足を真顔で踏みつける。うなだれていた上条くんはハルと私を交互に見た後、「分かった。分かりました」と一人で納得したように頷いて、続けた。
「俺、小さい頃は北海道に住んでたんですけど」
「……」
「それで夏休みに、ハルとくるみさんに遊んでもらってたんです。……覚えてないですか?」
父親の実家が北海道なので、幼少期の夏休みはよく北海道にいっていた。中学生になる頃にめっきり行かなくなったけど。
私とハルは、実家の中にいるだけでなく外に出て遊び回っていたのだけど、その都度、一緒に遊んでくれていた近所の男の子がいたのだ。
肌が白くて、ほっそりしていて、当時は祖父に言われるまで本気で女の子だと思っていた男の子。
「……え、あの、あのときの?」
上条くんはパッと明るい表情になって何度も頷いた。あの幼少期の顔つきからなら、確かにこんなイケメンに成長するのも納得できる。
「くるみさんにもう一度会いたくて。あ、ハルも。だからここ受験したんです」
「はぁ。そうですか……は!?」
ハルの後付け加減はスルーして、何でそんなどうでもいい理由で、と言うと、「……どうでもよくなんかないよ」と低い声で返された。
「俺、くるみさんのこと、好きだから」
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