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目が覚めたら、宙に浮いていた。もちろん空を飛んでいるわけがなく、重力に引かれるまま床に張り付いているのは分かっているのだが、体が接地している感覚がなかった。 室内は暗く、自分がどうなっているのかさえわからなかった。普通なら視覚に頼らなくても自分がどういう姿勢を取っているかはわかるはずなのだが、全く感覚がない。どういう事だろう。 俺は死んだのかもしれないな、とふと思った。この妙な浮遊感と身体的感覚の無さは、幽霊になったからだと考えれば、少しは説明がつくような気がした。 暗闇に目が慣れてきた。感覚も、わずかながら回復してきた。相変わらずどんな姿勢をしているのかはわからないが、俺はうつ伏せで寝ているらしい。体の腹側に、何かが触れている感じがあった。 どこにいるのかと周りを見回すと、土むき出しの床、三面(おそらく。後ろは見えないから)を囲む石でできた壁、そして正面の壁がない部分には鉄格子が嵌められている。なるほど、地下牢だ。俺の記憶から最も近いものはそれだった。尤も、地下牢に入れられたことなど今まで一度もないはずだから、その記憶の参照元は小説か何かだろう。どうも記憶が曖昧でよく思い出せない。
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