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シャルディは曖昧な笑みを浮かべ、仕方なしといった様子だ。
かといって別にシャルディは彼を嫌っているわけでもないし、興味がないわけでもない。実のところ、興味は大ありだ。
しかし、なんだか軽そうだし、彼の言葉を真に受けるのは危険だと思ったのだ。
だって彼は見たところ本当に整った顔立ちをしているし、容姿だけでなく仕草をとってもまるで本物の王子様のようなのだ。
ジゼルが浮足立つのも無理はないと思う。
そんな彼だからこそ、彼が私に一目ぼれをするなんて本当にありえるのだろうか?
「僕はあなたをお慕いしていることを素直にわかってほしかっただけなのですが、困らせてしまったのなら謝ります」
エドワードはそういってぺこりとシャルディに頭を下げた。
その瞳はまっすぐでとても嘘をついているようには見えなかったが、彼女の疑いは晴れない。
だって信じるには出来すぎた話なのだ。
「お気を落とさないでくださいな。エドワード様の気持ちは痛いほどわかりますわ。お嬢様はそれはそれは可愛らしいお方ですから、エドワード様が惚れてしまうのも無理はありませんもの」
ジゼルはシャルディの言葉は待たず、誇らしげにそう言った。
しかしシャルディはなんだか背中がこそばゆくなる。
「べっ、別に可愛くなんてないわよ」
「そんなことはありませんわ!お嬢様は可愛らしくていらっしゃいます、見た目だけは」
誉められて悪い気はしない。
しかし、どうもジゼルの言葉が引っかかる。
「…見た目だけは?」
ジゼルはうっかり失言だったと口を両手で押さえた。
どうやらこの侍女は実に素直な口の持ち主らしい。
しかし、すかさず絶妙なタイミングでジゼルのフォローに入ったのはエドワードだ。
「僕もシャルディ嬢は可愛らしいと思いますよ。」
どきーん。
シャルディの心臓は恥ずかしさと嬉しさで跳ね上がった。
実を言うと男の人にこんなことを言われるのは初めての経験だったし、内心は天にも昇る心地だった。
しかも相手は王子様!!
だが、シャルディは動揺を決して気取られないようあくまで平静を装った。(とはいえ、本人は装ったつもりだが実際には全て表情に表れていたのだが)
だってきっと自分はからかわれているに違いないのだから。
「どういうつもりかは存じ上げませんが、からかうのはお止しになってください。私だって傷つくのです」
「お嬢様!」
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