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シャルディがあくまで冷静にそう告げるとエドワードはかすかに寂しそうな顔をした。
「わざわざからかってこんなことをいうとでも?」
まるで心外とでもいいたそうにエドワードは苛立ちを露わにした。
そして同時に落胆しているようにも見えた。
―一体、どう言ったら彼女にこの気持ちが伝わるのだろう?
エドワードは考えを巡らせた。
昔からエドワードの周りにはいつだって女たちが溢れていたが、今の一度だって彼女たちに興味をひかれたことはなかった。
それなのにシャルディに出逢った瞬間、何かが弾けたように胸の鼓動は早くなり、彼女から目が離せなくなった。
こんな気持ちは彼にとって初めてなのだ。この感情を恋と呼ばないのなら何と呼ぶのだろう。
ふざけてなどいないと、本気なのだとわかってほしい。
そしてエドワードはひらめいた。
「僕は本気であなたのことをお慕い申し上げているんです」
「まぁ、お嬢様ったら罪な女性ですわね」
「ですから…どうか僕と結婚していただけないでしょうか」
「…えっ?」
おやおや、いきなり話がぶっとんだ。
突然の告白直後のプロポーズに2人はぽかんと口を開けたまま硬直してしまった。
エドワード本人はいたって真剣なのだが。
「け、け、け、結婚!?お嬢様が!?」
しばしの沈黙の後、まるで爆発でもしたように大声をあげたのはジゼルだ。
「無理無理無理無理!お付き合いだけならまだしも、ご結婚は悪いことは言いませんからやめておいたほうがいいです!!」
驚くことに先ほどまでシャルディを誉めちぎっていたジゼルは一気に反旗を翻した。
「お嬢様はお付き合いする分には愉快な方だと思いますが、ご結婚には到底向きません。どうかお考えなおされては?」
鬼気迫る勢いにはさすがのエドワードも圧倒された。
しかし、そんな2人を横目にシャルディは眉をぴくりと吊り上げていた。
「ちょっと!ジゼル、それどういう意味よ!?」
そんなシャルディの表情を見てジゼルは再び失言だったことに気づき、目を泳がせた。
「申し訳ありません、つい本音が…」
「それじゃよっぽど私に問題があるみたいだわ。それに愉快ってなによ」
「ええ、まぁ。言葉の通りですけど」
正直者のジゼルは否定しなかった。
おかげで彼女はシャルディにキッと睨みつけられるはめになり、ビクンと肩を揺らした。
だが、それでもジゼルは止まらない。
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