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なかなか勇敢で強靭な精神の持ち主である。
「だってお嬢様ったらお嬢様らしく大人しくしていてくださらないんですもの。おかげで伯爵はいつも頭を抱えておられるんですわ。問題を起こすのは大得意ですし、ネタには事欠かないとは思いますが…結婚となるとエドワード様がご苦労なさるだけですもの」
「なっ!」
シャルディはジゼルにあまりの言いようにあんぐりと言葉を失った。
どうやらジゼルが口にしたことはあながち嘘ではないようだ。
「この間だって…」
ジゼルが彼女の武勇伝を聞かせようと口を開くと、慌ててシャルディが止めに入った。
シャルディは心なしか恥ずかしそうに頬を赤く染めている。
「余計なことは言わなくて結構!」
「ぷっ」
エドワードは思わず笑った。
まるで2人の会話のやり取りはコントを見ているかのようだったからだ。
「ちょっと!なに笑ってるのよ!?」
シャルディが不満げに口を尖らせて言った。
「失礼」
しかし一度込み上げてきた笑いをこらえるのはなかなか難しかった。
シャルディはそんなエドワードに不快感を覚えたようでますます口をとがらせた。
「そもそもあなたねぇ、良く知りもしない人といきなり結婚なんてするはずないでしょ。恋愛には手順ってものがあるのよ、手順ってものが」
「手順…ね」
「そーよ、好き合った男女が清き良きお付き合いしてから結婚でしょ!?」
どうやらこのご令嬢は恋愛というものに強い憧れをもっているらしい。
いまだ政略結婚の多いこの時代でのんきに恋愛などと言ってられるのは庶民くらいなものだろうに。
正直、名家の令嬢が政略結婚をさせられたという話はざらなのだ。
多くの場合は父親によって強制され、顔も名前も知らないような家柄のみがよい男に嫁がされる。
その場合、相手が親子ほど年上の老人だった、なんて話も少な
くはない。
「じゃあまずは僕とお付き合いしてください!」
「じゃあって…そういわれてハイなんて言うわけないでしょ」
「ではどうしたらいいんでしょうか?僕には確かに爵位なんてありませんし、莫大な財産を持ってるわけでもない。でも不自由はしないと思います」
「そう言う問題じゃないの。だって私はあなたのこと良く知らないもの」
―じゃあ知ってたらいいのだろうか?
そういってシャルディはあっさりとエドワードの告白を断った。
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