さらわれた姫君

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「しかもフラれるの早すぎるだろ!まさか好きだと思ってすぐ告白したのか?」 「うん」 「その度胸は認めてやるよ。でもまぁ、それじゃあしょうがないわな」 「そうは言ってもこの見た目だぜ?若い娘だったらぽーっとなってOKしそうなもんなのになぁ」 「世の中そう上手くはできてないんだろ。やっぱ顔が良ければいいってわけじゃねぇんだろうよ」 「それもそうだな、わっはっは!」 彼らは面白そうに笑い転げた。 エドワードの傷心話も彼らにとってはいい酒の肴である。 「ちょっと!他人事だと思って!!僕は本気なんだから!!」 「ははは、ワリィ、ワリィ」 「んで?兄ちゃんが惚れた女ってのはどんな女だったんだ?」 「美人じゃなくてもよっぽど秀でた何かがあったってことだろ?」 「うん。彼女はとにかく表情がころころ良く変わる娘で、面白いんだ」 「面白い?」 「そう。喋らなければ可愛い普通の令嬢なんだけど、どうも彼女はじっとしていられない性質らしくてね」 「お転婆娘ってわけか」 「まぁね」 エドワードはシャルディを思い出し、頬を綻ばせた。 今も思い出すたびに胸がきゅんとする。 「この娘さんはここら辺に住んでるのかい?」 「そうだと思う。侍女と一緒だったから。そういえば伯爵の娘って言ってたかな、名前はえーっと…」 「伯爵の娘だって!?」 「…伯爵ってぇと、もしかしてラゼート伯爵か?」 男たちは顔を見合わせて妙な顔をした。どうやら心当たりがあるらしい。 しかしどうもすっきりしない顔だ。 「そう!ラゼート伯爵だ。ここらでは有名なの?」 「ああ、有名だとも。ラゼート伯爵はここらで一番の金持ちなのさ。俺たち貧乏人とはわけが違う」 「へぇ」 「その娘って言ったらシャルディ嬢ちゃんだろ?」 「悪いことは言わないからやめといた方がいいんじゃないか?」 「彼女の侍女にも言われたんだ。どうして?」 「確かにシャルディ嬢ちゃんと言えば見た目はそこそこ可愛らしく見えるが、とんでもないじゃじゃ馬娘であちこちで悶着起して噂になってんだ。おかげで伯爵も頭抱えてるって話だぜ」 「そのシャルディ嬢ちゃんに目をつけるなんざ、モノズキがいたもんだ。どうせ見てくれだけで中身まで知らないんだろう?」 確かにエドワードは彼女と親しいわけではないから彼女のことは大して知らない。
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