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―いいじゃないか、少しくらいじゃじゃ馬でも。
「とにかくあの嬢ちゃんと付き合うにはそれ相応の覚悟が必要だ。お前にその覚悟はあんのか?」
「もちろんさ」
エドワードは怯まなかった。
「おや、めげないねぇ」
彼らはにたにたと笑ってエドワードをからかった。
しかし、その時そのうちの1人が思い出したように声をあげる。
「そういえば!シャルディ嬢ちゃんで思い出したけど、今朝変な噂聞いたんだ」
「なんだい?噂ってのは」
「どうやらあの伯爵がついに娘を嫁に出す覚悟を決めた、って話で、明日縁談が組まれてるって話だぜ」
「馬鹿言え、ここらじゃシャルディ嬢ちゃんのことを知らねぇ奴はいねぇ。そもそも嫁の貰い手なんかあるとは思えねぇけどな」
「それなら僕が!」
エドワードは率先してアピールしたが、あっさりと流された。
「それにラゼート伯爵はなんだかんだ子煩悩で有名だからなぁ。手のかかる娘でもそう簡単に手放すとは思えねぇ」
「確かにそうなんだが…縁談相手ってのがさる貴族の坊ちゃんらしくてな」
「猿貴族?なんだそりゃ」
「猿じゃねーよ。つまり…信じられない話なんだが、王家と繋がりのある坊ちゃんなんだとか」
男が真剣に言うと周りの男たちはがははと笑い飛ばした。
どうにも信じたくはないらしい。
「王家がシャルディ嬢ちゃんなんか欲しがるわきゃねぇだろ。選ぶならもっと美人で気立てのいい娘を選ぶだろうよ。第一、そんな王家の人間がこんな田舎街の娘とどう出会うってんだ?」
「それは俺にもわからん。でも街中で噂になってるぜ」
「シャルディ嬢ちゃんがなぁ…それが本当だとするとまぁた一悶着起きそうだなぁ」
「ってことで、どっちみちお前の出番はなさそうだぜ」
男はくっくと笑った。
そしてエドワードは子供のように口をとがらせたのだった。
―彼女が僕以外と結婚?冗談じゃない。
「ねぇ、おっちゃん。そのラゼート伯爵の屋敷がどこにあるのか教えてよ」
「お前、屋敷知ってどうする気だ?まさか乗り込んでいく気か?」
「そんなのやめとけ、やめとけ。どこの馬の骨ともわからない男が訪ねて行ったって門前払いくらうだけだぜ」
「そんなのわかんないじゃないか」
「馬鹿だな、しつこい男は嫌われるってのがわからないのか?」
「僕って案外、諦め悪いみたいだ」
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