さらわれた姫君

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ベランダで耳を澄ますと明かりが消えたシャルディの部屋は静かだ。きっと今頃は夢の中だろう。 そこでエドワードはポケットからピンを取り出し、数分もかからずにあっさりと窓の鍵を開けて中に足を踏み入れた。 「お邪魔しまーす」 誰に言うわけでもなく呟いて、立派に不法侵入したのである。 シャルディは天蓋付きのふかふかのベッドですやすやと規則正しい寝息を立てている。 その寝顔は無防備で昼間会った時よりも幼く見える。 ―なんて可愛いんだろう。 エドワードの胸はきゅーんと高鳴った。 この寝顔を見るとじゃじゃ馬娘には到底見えないのに。 「シャルディ」 彼はシャルディの眠るベッドに近づいて耳元で甘く囁いてみた。 すると彼女は一瞬、ぴくりと動いたがすぐにまた深い眠りに落ちる。 「キミをさらいに来たよ」 ふふふっと口元に悪戯な笑みを浮かべ、エドワードが彼女の体を抱き上げた瞬間。 体がふわりと浮いて異変に気付いたシャルディがゆっくりと目を開けた。 「…誰?」 目の前には誰かの影がうっすらと見えているが、なにせ寝ぼけていて良くわからない。  しかし、数分もたてば次第に頭がはっきりしてきたようで目を丸くしてエドワードを凝視した。 「あっ!あなたは昼間のっ!?」 「お目覚めかな、シャルディ嬢」 しかしエドワードの言葉なんて彼女の耳には入っていないようで、突然じたばたと抵抗し始めた。 どうやらエドワードに抱きかかえられていることに気がついたらしい。 「ちょっ!何しているの!?早く降ろしてよーーーーっ!」 「そんなに動くと危ないよ」 あまりにも彼女が激しく抵抗するのでしょうがないな、とエドワードはやむなく彼女を床に下ろした。 が、それがいけなかった。 なんと彼女は勢い余ってベッドの角に頭をぶつけて気絶してしまったのである。 「あーあ、だから危ないって言ったのに」 こうなったのは他ならぬエドワードのせいなのだが、当のエドワードは悪びれた様子もなく、のんびりと言った。 そして彼はまんまと気絶したシャルディを抱え、そのままさらったのである。
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