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「と、まぁこういう理由」
エドワードはあっさりとそういってにこにこと笑った。
どうやら彼に罪の呵責というものはないらしい。
シャルディは爪を噛みながら険しい表情でエドワードを睨みつけた。
彼の説明により全てを思い出したシャルディはだんだん腹が立ってきたのだ。
「信じられないっ、人が気絶している間にさらうなんて!!この人でなし!!」
「人でなしなんて人聞きが悪いなぁ」
あっけらかんとしているエドワードを横目に船員たちはうろたえていた。
そしてシャルディの横で話を聞いていたフィリップも嫌な予感が当たったと眉間にしわを寄せた。
実は船員たちはエドワードから「彼女は僕のお嫁さん」と聞いていただけだったので、てっきり同意の上で船に乗っているのだと思っていたのだ。
それなのに今語られた事実は人さらい。完全に犯罪だ。
「お、お頭…これからどうするんで?」
ビビり屋のアガードがちらちらと彼女を見ながら尋ねた。
彼はいかにも中年らしい小太りな男で体が大きい割には気が小さい。
人をさらってきたと聞いてまた怖気づいているに違いない。
「どうするもこうするも予定通りだよ」
「いや、あの…彼女を家に帰さなくてよろしいんで?」
「何で?」
「だって人さらいは犯罪…。下種のやることですぜ?」
「下種っていわないでよ。仕方なかったんだから」
アガートはどこが仕方なかったのか問いたかったが、ろくな理由じゃなさそうなのでやめておいた。
エドワードが彼女を好きだという気持ちはわかったが、その行動はいささか問題だと思う。
「それにね、アガード。キミは忘れているようだけど、そもそも僕らは海賊なんだよ?」
「海賊!?」
海賊という言葉にいち早く反応したのはシャルディだった。
そう、実を言うと彼らはカタルナ海賊団という海賊で、そもそもが犯罪者集団だったのである。
「海賊が宝を盗むのは当たり前だろ?」
「でもお頭がやったのは海賊って言うよりは盗賊…」
「うるさいなぁ。細かいことはいいだろ!」
有無を言わさぬエドワードの言葉に船員はごくりと息を飲んだ。
「ちょっと!さっきから好き勝手いってるけど海賊だからって人をさらっていいはずないでしょ!!私を早く家に帰してよ。きっと今頃お父様もお母様も青くなって捜してるわ!!」
シャルディがそういってエドワードに詰め寄ると、彼はにんまりと不敵な笑みを浮かべた。
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