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「そうかな?キミの噂はいろいろ聞いてるよ。キミはとんでもないじゃじゃ馬娘で家出も一度や二度じゃないらしいじゃないか」
「うっ」
「きっとご両親は今回も家出したと思うだろうね。それにちゃんとキミの名前で書置きも残してきたから安心して」
「安心できるかぁー!!」
「何て書いたと思う?」
「『運命の人を見つけました。心配しないでね。――シャルディ』ってね」
「はぁーーーーーっ!?運命の人って誰よ!!」
「僕」
「勝手に決めないでっっ!!!!!!」
「だって事実だし」
初めて話した時には気づかなかったが、このエドワードという男の自信はどこからくるのだろう。
シャルディは苛立ちながらもそれらをぐっと押し殺して言った。
「まぁいいわ。仮にメモを残してきたとしてもよ、私の筆跡かどうかくらいお父様やお母様も気づくはずだわ」
「ああ。ところが、僕は筆跡を真似るのが得意なんだ。書いて見せようか?」
そういって彼は1枚の白紙にさらさらと何かを書きとめ、そのメモをシャルディに手渡した。
「嘘…」
そこに書かれた文字は確かにシャルディの筆跡とほぼ変わらない。まるで彼女が書いたかのようだ。
「どうして私の筆跡を…」
「そりゃあ僕はキミの部屋にいたんだもの。キミが書いたメモぐらい見つかって当然だよね?」
シャルディは絶句した。
このエドワードという青年は見かけこそ王子様のように美しいが、性根は真っ黒なのではないかと思った。
少なくとも見かけどおりの性格ではないのだろう。
「そんなわけでキミのご両親はそれほどキミのことは心配してないと思うよ。ただ、少し厄介なことにはなってるかもね」
「何よ、厄介なことって」
「まぁキミは知らなくていいよ、うん」
このろくでなしは一体何者なのだろう。
そして私の何なんだろう。
「あんた、一体何者なのよ」
「僕はカタルナ海賊団・船長のエドワードだよ。よろしく☆」
腹黒王子はそういってキラキラの笑顔をシャルディに向けた。
*
その頃、マデルンにあるラゼート邸では予想通り一騒動起きていた。
発端はこの日の朝のこと。
ジゼルがいつものようにシャルディを起こしに行くと珍しく寝台はすでにもぬけの殻だった。
「お嬢様ったら、珍しく早起きして散歩にでも行ったのかしら」
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