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こんな夜中の電話、それに女性の声がすれば疑われても仕方が無い。
やれやれと彼が考えていると、
「ねぇ……彼女は……大事?」
再び質問してくる女性。
疑われた原因である彼女にイラッとしつつ横目を向けると、やはり先程と同じく笑顔。
……だが、その笑顔を見れば見るほど、肌が粟立ち寒気が体を襲うのは何故だろうか?
「ま……まあね。お互い高校からの付き合いで、今度式を挙げるんだ」
一言文句を言うつもりが、気が付けば正直に話していた。
いまだ感じる正体不明の寒気、そして彼氏に置き去りにされたはずなのに笑顔で自分を見詰める彼女。
彼は次第に怖くなってきたが、まさか彼女を捨てていくわけにも行かない。
せめて早く山を降りて駅に着かないか、そう思っていると……
「ねぇ……」
「? うわ!?」
ギュルルルル!
何時の間にか覗き込むように至近距離まで顔を近づけていた彼女に驚き、ハンドルを操る手が狂う。
他に車が居ないことが幸いしてか、何事も無く車体を戻す事は出来たが、彼女はその間もずっと彼に顔を寄せていた。
これには流石の彼も頭にきて、彼女に顔を向け怒鳴ろうとした。
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