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「俺のことわかります…よね?」
何言っているんだろう。わからないはずないじゃない…。
私が小さく頷くと、敦は途端に顔をほころばせた。
「良かった!俺ずっとあなたのこと探してたんです!」
“探してた”?“あなた”?
敦の言葉がとにかく引っ掛かる。元カノで、しかも小・中・高同じ学校で過ごした幼なじみだと言うのに、なぜそんな言い方をするの?
私は必死に考えた。しかし結論が浮かばない。これは夢なんじゃないかと思い込むのも無理があった。
「…俺に教えて貰えませんか?」
「え…?」
「長谷川敦について…教えて欲しいんです。」
思わず耳を疑った。
「ちょっと…やめてよ…いきなり現れて…そーゆうの…。」
私の言葉に動揺する様子はなく、敦は真剣な目でこっちを見つめている。
「冗談でしょ…?」
私の声は震えていた。
敦は少し顔を曇らせ、じっと私の顔を見つめている。そして敦は小さく、呟くように言った。
「俺、3ヵ月前に交通事故にあって、記憶がないんです。」
体中の力が抜けるのがわかった。
敦が記憶喪失?
私はただ呆然としてしまった。2年振りの再会がこんなことになるなんて予想もしていなかった。
「…あの、大丈夫ですか?」
敦の声で私は我に返る。
「無理ないですよね…いきなりこんなこと言われたら…。」
敦は苦笑いを浮かべると真っ黒で長めの前髪をかき上げた。
困った時に前髪をかき上げるクセ…治ってないんだ。
私はぼんやりとそんなけとを考えた。そして目の前に立っている彼をただただ呆然と見つめることしか出来なかった。
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