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「告白したのは、私だった。」
食後のコーヒーを飲みながら2人で卒業アルバムを眺めた。
「まさかOKして貰えるなんて考えてもなくてさ。OKして貰った時は嬉しくて、涙が止まらなかった。」
敦は私の独り言っぽい話しをただただ黙ってきいてくれた。
「別れたのは、本当に些細なことだったんだけど…。友達と大学受験の話しててその友達から初めて敦が東京の大学受けること聞いて。それで口論になっちゃって…。」
目頭が熱くなってギュッと拳を握りながら敦の方を見た。
彼は相変わらず真剣な顔つきで私の方を見つめている。
「…本人に本人の話しするのって、変な感じだね。」
苦し紛れに笑うと、敦も小さく笑みを浮かべた。
「佐恵子は今でも俺が好きなの?」
それは優しい口調だった。まるで、小さな子供に質問するように。
私はぽつりと
「わかんない。」
とだけ呟くように答えた。
そしてマグカップを手に取り、すっかり温くなってしまったコーヒーをすすった。
別れてから敦と私は互いにすれ違い、結局卒業するまで言葉を交わすことさえなかった。
敦は東京の大学に、私は県内の大学に入学した。最後までおめでとうの一言が言えなかった。今思えば小さな意地だったのかもしれない。
入学して数ヵ月後、敦と同じ大学に進学した友人から敦に彼女が出来たことを聞かされた。
その時やっと、自分の恋が終わったことを知った。
なんて我が儘で身勝手だったんだろう。今の私には後悔しか残っていない。
「もし俺の記憶が戻ったら、」
不意に黙っていた敦が口を開いた。
「もっかい友達からやり直そう。そうすれば、絶対全て上手くいくよ。」
「…‥そうだね。」
私は今にも泣き出したい気分だった。
もう、あの日々には戻れないことを私はわかっていた。
なぜなら私は、
君を傷付けてしまったから…。
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