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こいつがいなかったら。
同じ年に同じ町でケンが大騒ぎながら生まれてこなかったとしたら。
今の俺は何してたんだろうと一人感傷的な思いでケンの顔を覗き込むと…寝てるじゃん。
時計の短針は見るともう1時を過ぎていた。
僕も寝ようとしてリモコンの電源ボタンを押そうとしたその時、ケンの好きなイングランドのオーウェンが鮮やかなボレーシュートを決めた。
フォワードだけに許される派手なパフォーマンス。
最後にほんの少しでもボールに触れれば、もうみんなのヒーローになれる。
「サッカーなんて皮肉だ。そう何回唱えたことか。」
寝顔はそう呟いて、大きないびきを発する。
僕らの高校サッカーが、いよいよ始まる。
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