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さっき、正式に弁護士に依頼していれば、書類作りなどの作業はやってもらえるだろうし、女との面会にも同席してもらえたかもしれません。
でも、そうしてない以上、自分でやるしかありません。
『認めます。』の続きには、私からの条件をいくつか、そしてそのあとに署名欄を作りました。
もちろん、こんな作業をするのは初めてだし、普段仕事で書き物をするときには人一倍悩んで時間がかかってしまう私でしたが、このときはなぜかスラスラと文章が出てきたのが、今でも不思議です。
できた文章を何度か読み返し、書き漏らしたことがないかを確認してから、とりあえず10枚プリントアウトしました。
本来なら2枚でいいはずですが、何があるか分かりません。
プリントが終わると、この「文書1」を破棄して終了し、パソコンの電源を切りました。
次に、クローゼットから私とチビの洋服をかばんに詰めました。
量的に補充したかったのもありますが、私は、明後日のことを考えていました。
明後日──旦那の浮気相手と初めて顔を合わせる日です。
そんなシチュエーションで、何を着ていくのが妥当なのか、サッパリ分かりません。
逆に、私の立場的には、何を着ていっても間違いではないとも言えるでしょう。
でも…
服装で印象は決まります。悩まない訳はありませんでした。
そして、随分悩んだ末、私は、ミントグリーンのアンサンブルと、黒のきれい目のパンツを、かばんに入れました。
そして、それに合うパンプスも。
浮気相手に会う為の洋服を、第一印象を気にして慎重に選ぶ自分が馬鹿みたいで、少し笑いました。
かばんに洋服を詰め込み、時計を見ると時間は3時半。
時間を無駄にしてはいられません。
ぐずりだしたチビにおっぱいをやりながら、私は実家近くの美容院に電話し、明日の予約を取りました。
平日だからか、予約は希望の時間にすんなり取れました。
最後に美容院に行ったのは、臨月の時ですから、もう五ヶ月も前になります。
パーマとカラーが伸びきった髪は、だらしなく見えます。
でも、完母(完全母乳)のチビを誰かに預けて美容院に行く ということは、私にとってかなりの冒険で、今までためらっていました。
…いや、美容院に行きたいとさえ私は、チビが生まれてから思わなくなっていました。
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