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「嫁に代わるんで、ちょっと話してもらっていいですか…?💧」
『いいけどさぁ…俺、何を言えばいいの?』
「だから…嫁に…💧」
『嫁サンに?』
「…💧💧💧」
『…』
「───謝って下さい💧💧💧💧💧」
この時の旦那、顔面蒼白で、尋常じゃなく汗をかいていました。
田尾さんは、旦那より7つも年上の、仕事でお世話になった人。野球観戦やゴルフに一緒に行ったりしてはいますが、【友達】とはまた違います。
そんな、目上の人に対して、
「嫁に謝れ」
と、旦那は言い放ったのです。
当然、電話ですから、相手の顔は、見えません。
しかし、旦那の「謝って下さい」に対して田尾さんがムッとしている…という空気を、私は感じました。
あるいは、それは私の気のせいだったかもしれませんが…
なにしろ、空気は氷りついていました。
しばらくの沈黙のあと、
『分かった』
田尾さんは言いました。
顔面蒼白滝汗の旦那は、私にやっと、携帯を渡しました…やっと。
「もしもし?田尾さんですか?」
『そうだけどぉ…、迷惑かけてすいませんでした…』
私は、電話の相手が本当に田尾さんかどうかをまず確かめました。
田尾さんは、私に謝りました。
しかし…なんという憮然とした態度…
小さい子が母親に、「謝りなさいっ😠」と言われて、ふてくされながら謝るあの感じです。
旦那との会話で漏れてくる声、話し方からも感じていましたが、この人は全く悪びれていない…
自分のせいで私たちの家庭がこんなことになっているというのに…
…と、そのときの私は思いました。
と いうことは、今考えると、旦那を疑いながらも、心の底ではまだ信用していたんだな と思います。
旦那がそんな器用に嘘を吐けるはずがない と。
低姿勢で謝られるかと思っていた私は、田尾さんの予想外の調子にまず驚き、だんだんと腹が立ってきました。
「旦那に、何か渡しました?💢」
『うん』
「何ですか?💢」
『…ヘルスのポイントカードと、○○○○ー○ー』
私はできるだけ丁寧に、冷静にと心掛けようとしましたが、きっと語気は荒くなってしまっていたと思います。
「なんでそんなもの旦那に渡したんですか?💢」
『うちの嫁に…バレるとヤバイから』
旦那の話が嘘であるならば、ここまで打ち合わせは完璧です。しかし──
私たちの会話は、唐突に終了します。
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