4月10日

10/13
2710人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
「嫁に代わるんで、ちょっと話してもらっていいですか…?💧」 『いいけどさぁ…俺、何を言えばいいの?』 「だから…嫁に…💧」 『嫁サンに?』 「…💧💧💧」 『…』 「───謝って下さい💧💧💧💧💧」 この時の旦那、顔面蒼白で、尋常じゃなく汗をかいていました。 田尾さんは、旦那より7つも年上の、仕事でお世話になった人。野球観戦やゴルフに一緒に行ったりしてはいますが、【友達】とはまた違います。 そんな、目上の人に対して、 「嫁に謝れ」 と、旦那は言い放ったのです。 当然、電話ですから、相手の顔は、見えません。 しかし、旦那の「謝って下さい」に対して田尾さんがムッとしている…という空気を、私は感じました。 あるいは、それは私の気のせいだったかもしれませんが… なにしろ、空気は氷りついていました。 しばらくの沈黙のあと、 『分かった』 田尾さんは言いました。 顔面蒼白滝汗の旦那は、私にやっと、携帯を渡しました…やっと。 「もしもし?田尾さんですか?」 『そうだけどぉ…、迷惑かけてすいませんでした…』 私は、電話の相手が本当に田尾さんかどうかをまず確かめました。 田尾さんは、私に謝りました。 しかし…なんという憮然とした態度… 小さい子が母親に、「謝りなさいっ😠」と言われて、ふてくされながら謝るあの感じです。 旦那との会話で漏れてくる声、話し方からも感じていましたが、この人は全く悪びれていない… 自分のせいで私たちの家庭がこんなことになっているというのに… …と、そのときの私は思いました。 と いうことは、今考えると、旦那を疑いながらも、心の底ではまだ信用していたんだな と思います。 旦那がそんな器用に嘘を吐けるはずがない と。 低姿勢で謝られるかと思っていた私は、田尾さんの予想外の調子にまず驚き、だんだんと腹が立ってきました。 「旦那に、何か渡しました?💢」 『うん』 「何ですか?💢」 『…ヘルスのポイントカードと、○○○○ー○ー』 私はできるだけ丁寧に、冷静にと心掛けようとしましたが、きっと語気は荒くなってしまっていたと思います。 「なんでそんなもの旦那に渡したんですか?💢」 『うちの嫁に…バレるとヤバイから』 旦那の話が嘘であるならば、ここまで打ち合わせは完璧です。しかし── 私たちの会話は、唐突に終了します。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!