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―モリノ・デ・グーチ村―
「や・・・やっと村に着いた・・・」
ナックが森を抜けたのは日が傾いてからだった。もう辺りはすっかりと暗くなっている。
「あー、本当歩きって疲れるし時間かかるし汗かくしダルいよなぁ。こんな事なら俺もメェガの1匹や2匹飼っとくべきだったなぁ」
とりあえず宿屋を探そうとナックはキョロキョロと見回す。この村はそんなに大きくなく、こじんまりとした、それこそ森から抜けた旅人などが泊まるのに利用する、というくらいの村だ。宿屋はすぐに見つかった。
「よーし、あの宿に決め・・・」
グゥゥ、とお腹から音が鳴る。
「・・・っと前に、飯だよな」
空っぽの胃の中の事を考え、先に夕食をとる事にした。寂れた(失礼かもしれないがナックはそう思った)村だ、慌てて部屋を予約しないでも部屋は取れるだろう。そう考えナックは飲食店目指して歩を進めた。
やはり店も簡単に見つかった。カランカランと、扉に付けられた鈴が音をたて、客がやって来た事を知らせる。
「いらっしゃーい。お好きな席にどうぞー」
と、店員の女が声をかける。ナックは窓際の席に腰を下ろした。
店内は薄いオレンジのライトで照らされ、落ち着いた雰囲気を出していた。木造の建物は、人が歩く度に重い木の音が響く。テーブルに置かれたメニューを開き、どれにしようか吟味する。
「ご注文、お決まりですか?」
グラスに注がれた水をテーブルに置きながら店員は言う。
「あ、じゃぁコレを」
とりあえずあまりお金を使いたくなかったので、メニューの中で一番安いやつを頼む。かしこまりました、と店員は返事すると、店の奥に消えていった。
ナックは基本的にやる気というものが無い。成り行きに任せ、なんとかなるだろうといつも考えていた。趣味もなければ特技もない。成人するからどうとかも考えていなかった。
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