第1章 怒れる竜の襲撃

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王国は抵抗軍が到着するまでの間、まるで誰も居なくなったかのように静まりかえり、王国の人間は抵抗軍に怯えて身震いし、ドラゴンはそんな人間たちを慰め、俺が守ってやるから、と言って人間たちを安心させた。 そしてどれくらいたっただろうか。 王国の周りを囲む森林の木々から数千、いや数万にも上る1mから10mと様々なドラゴンが姿を現した。 どうやら王国に気付かれずに奇襲をしかけるつもりだったらしい。 王国の周りにはレンガ作りの巨大な壁があり、その高さは20mと凄まじい高さだったが、翼があるドラゴンにはそんな物など軽々こせる。 抵抗軍は王国の巨大な壁の前でとまると、王国の入口の頑丈かつ豪華な扉の前にガルドが立つと、それぞれのドラゴンに体力をつけるために各ドラゴンに与えた大きな袋の中の食料を喰うように指示した。 ガルドの命令は伝言のように一斉に数万のドラゴンに伝わり、抵抗軍のドラゴンは片前足に握る大きな、なにかモゾモゾ動いている袋に前足を起用に突っ込み、中の物を取り出した。 それは…奴隷の人間だった。 奴隷の人間たちはドラゴンに掴まれると必死に暴れるが、ドラゴンの力に敵うはずなどなく、残虐なドラゴンは可哀想とも思わず奴隷の人間を巨大な、凶悪な口に放り込み、そのまま人間の骨をバリバリ噛み砕きながら胃に押し込むと、再び袋に前足を突っ込み、中の人間を引っ張り出すと口にほうばった。 いずれにせよ残虐に、汚く野性味溢れるドラゴンへと変えられたドラゴンは、奴隷の人間を喰うことをためらうことはおろか、可哀想とも思わず、ただの餌として無表情で喰い、腹が膨れるとその噛み砕いた奴隷の人間の血で真っ赤に染まる牙のある凶悪な口をグフフっと不適に笑う口にし、ネバネバした汚いヨダレをダラリと垂らすと、ガルドの指示を待った。 ドラゴンはこうすることで野性味を取り戻し、より凶暴に、より強くなるのである。 中にはガルドの指示があるまでの間が暇なのか、切り株に巨大な体を預けて爪を牙で磨ぐドラゴンや、破壊行動が我慢出来なくなったのかそこらじゅうに生えている木々をなぎ倒し、粉砕し、切り刻むドラゴンや、腹がまだ減ってるのか小型のドラゴンから袋を奪いとり、中の人間を引っ張り出してほうばるドラゴンや、暇潰しに最後の人間だけを残して、その人間を舐めたり口の中にいれてモゴモゴしたりしては人間の嫌がる顔を見て不適に笑うドラゴンもいた。 いずれにせよ、森林にはドラゴンのおぞましい声と、人間の泣き叫ぶ声や悲鳴、呻く声が響き渡っていた。
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