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『グギャァァッ!!!!』
一匹の真っ赤な鱗を持つドラゴンが叫びながらこちらに飛んで来たかと思えば、船に近づいた途端にその凶悪な口から灼熱の炎を吐き、木製のデッキを燃やしながら破壊する。
『くそっ!ドラゴンだらけだ!』
『どうするのよ…?私たち…彼らの餌になるだけなの?』
『そんな事言うなマリア!俺たちは絶対に生きる!その赤ん坊と一緒にな!』
俺は必死に飛行船を運転しながら、早くも絶望を感じ始めている彼女に勇気づける。
俺は邪悪の塊とも呼ばれるドラゴンが嫌いであり、悪を嫌うこの道17年のベテラン飛行士、ミルド・ザーカー。
こんなところでアイツら怪物に食われてたまるか。
弱い発言をしながらも赤ん坊をしっかりと抱くのはミルド・マリア。
彼女は心優しい性格を持ち美しい顔立ちの凛とした女性で、手に抱いているのは俺との間で生まれた子供だ。
そして、その赤ん坊の3歳の誕生日と言うことで記念として飛行船で空の旅をしていた最中に…アイツらの大群に襲われた訳だ。
『もう…持たないわ…この船…』
『諦めるな…マリア!大丈夫だ!まだ飛べる!!』
一応は励ましの言葉をかけたが…正直船が危うい。
俺が運転するこの飛行船は、貨物用の大型飛行船であり、船体は木製ではあるもののそれなりの耐久性はある。
それに大量の貨物を運ぶために船体の上部のバルーンは大型の物が数十個つけてあり、船体を浮かしたり方向転換にはかかせないプロペラ機も20機と大量に取り付けられている丈夫な船だ。
さらにコイツは今ではまだ珍しい蒸気機構の飛行船である。
しかし今、そんな船を取り巻くように飛び交う無数のドラゴンたちによって灼熱の炎で船体の一部は燃え上がり、その炎や巨体の体当たりで飛行船は様々な場所が破壊されている。
幸いバルーンはまだ数個残っているみたいだが…飛んではいるが高度は徐々に落ちている。
最初は雲の上を飛んでいたはずが今では地面が遥か真下に見える。
そうして炎上しながら進むコイツは目立ち、ドラゴンを呼び寄せてしまってる訳か耳障りなおぞましい叫びが一層多くなっている気がする…。
ドラゴンの中には船体を壊す物が多いみたいだが、中には飛行船のデッキに舞い降りては積み荷を壊し、中の食材をあさるドラゴンも居り、時には船体のデッキをギリギリで滑空しデッキにいる船員を拐っていくドラゴンもいた。
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