第1章 怒れる竜の襲撃

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『くそっ…もう俺たちしか残ってないのか…』 『……』 『狙撃用の砲台も壊されちまった…』 必死に操縦している間に船員の最後の1人がドラゴンに拐われてしまったらしい。 いつの間にか俺たちが最後のニンゲンになっていた。 一応コイツには、万が一ドラゴンに出くわした時のために狙撃用の砲台がいくつか積んでるが…それもアイツらによって壊されているようだ。 まぁ、狙撃用と言っても強大な生命力を持つドラゴンを倒すなど不可能に近いために、砲台から撃つ弾にはドラゴンの嫌がる匂いを錯乱させる物がつまっているだけだ。 それに万が一使えたとしてもこれだけ多くのドラゴンを追い払えるだけの弾は…ない。 『マリア…』 『もう…おしまいね…』 俺は所々破壊された運転席で壊れかけた飛行船を必死に運転しながらマリアをみる。 マリアはただそう言うと、絶望しきった顔をしていた。 こうしている間にも怒れるドラゴンにより、また一機、また一機とプロペラ機が、船体が、デッキが破壊されていく。 デッキにはいつの間にかドラゴンで溢れており、積み荷の食材をあさってはその凶悪な、巨大な口に放り込んでいた。 また、中にはデッキで死んでしまい倒れたままの船員を前足で器用に拾いあげるとそのまま口に放り込んでは鋭利な牙で船員を美味しそうに噛みながら食べているドラゴンもいた。 中には食材を争って喧嘩、それもお互いを殺し合うような勢いでしているドラゴンもいた。 もはや窓から見えるその光景は地獄そのものだ…。 しかし幸い、運転室内にいる俺たちには気づいていないようだ。 『…じきに蒸気機構が止まって…バルーンがしぼみ、プロペラが止まって墜落する…』 『その前にドラゴンによってバラバラにされるんじゃないの…?』 『そうかもな…』 『…どちらにせよ…私たちに生きる希望は無いわ…』 『…あぁ』 しかし…、流石の俺も絶望をゆっくりと感じ始めているようだ。 自然と諦めの言葉が出てしまう…。
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