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『グゥゥゥ…』
『さぁ…。何も遠慮することは無いわ…』
マリアはそう言うと、ドラゴンを見上げたまま動かなかった。
一方、ドラゴンは最初は強靭な後ろ足で二足で立っていただけだったが、はるか上にある頭をゆっくりと降ろし、マリアのすぐ側まで近づけるとその巨大な瞳でマリアを見渡し、唸る。
マリアとあのドラゴンとの距離は1mも離れていなかったために、きっとマリアにはあのドラゴンの生暖かく、肉が腐ったようなすえた臭い吐息がふきかかってさぞかし不愉快だろう…。
しかし、今から食われると言うのにマリアは顔色1つ変えないで睨み返している。
『グァァァァァッ!!!!!』
すると、遠くにいる俺すらも身震いするような咆哮をしたかと思うと、その勢いでマリアの体中にドラゴンのベトベトした異臭を放つヨダレを飛ばし、付着させたかと思うとそのまま大きく開いた口でマリアを一口で口内におさめてしまった。
そうしてそのまま口内におさめたマリアを鋭利な牙で、噛み砕き、ゴックンと胃袋におさめた。
牙によってグチャグチャにされたであろうマリアの体があのドラゴンの喉を滑り落ちていくのがここからでも分かる…。
…俺はマリアが死ぬ始終を見終えるとと扉をしめ、扉によりかかるように座り込んだ。
『マリア…』
そうは呟くが、ドラゴンの胃袋におさめたられてしまったマリアが答えてくれるはずもない。
目の前にはマリアがさっきまで抱き抱えていた赤ん坊が、母親が死んだと言うのにスヤスヤ寝ているだけであった…。
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