第一話

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
奇妙な夢を見た。 僕は目まぐるしく移り変わる風景を、埃くさい電車の車窓から眺めていた。 時に戦地に、時に工場地帯に、そして時には見事なバラ園に。 何の脈絡も関連性もない風景が、まるでパラパラ漫画をめくる様に過ぎて行く。 僕はただ淡々とそれを眺めていた。 夢の中の僕はこれが夢だという事に気付いている。 ただ目覚める事に希望を抱いたりはしていなかった。 目覚めた先に待っている世界に何の期待もないからだ。 現実に打ちのめされる位なら、ここでこうして景色を眺めている方が幾分もマシだ。 移り変わる風景の果ては駅だった。 駅の名は『現実』。 電車が停止し、車内にアナウンスが流れる。うるさい位にしつこく繰り返された。 「終点、現実でございます。お目覚めの際は忘れ物のないようにお気を付け下さい」 僕はそれでも窓を眺めていた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!