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奇妙な夢を見た。
僕は目まぐるしく移り変わる風景を、埃くさい電車の車窓から眺めていた。
時に戦地に、時に工場地帯に、そして時には見事なバラ園に。
何の脈絡も関連性もない風景が、まるでパラパラ漫画をめくる様に過ぎて行く。
僕はただ淡々とそれを眺めていた。
夢の中の僕はこれが夢だという事に気付いている。
ただ目覚める事に希望を抱いたりはしていなかった。
目覚めた先に待っている世界に何の期待もないからだ。
現実に打ちのめされる位なら、ここでこうして景色を眺めている方が幾分もマシだ。
移り変わる風景の果ては駅だった。
駅の名は『現実』。
電車が停止し、車内にアナウンスが流れる。うるさい位にしつこく繰り返された。
「終点、現実でございます。お目覚めの際は忘れ物のないようにお気を付け下さい」
僕はそれでも窓を眺めていた。
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