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「ゼェ……ゼェ……」
シャキン。
「これで終わりだ」
そこにいたのは、なにやら歪な球体に剣先を向けている男の姿。
彼の着ている鎧は血飛沫のせいか、窓からの月明かりに鈍い光を帯びていた。
そして、彼の直ぐ下に落ちている球体の様なものの近くには、前に繋がっていただろう胴体が転がっている。
「ク、クククッ……。それは…どうかな…?」
「……フンッ!」
ズバッ!!
勇者は魔王の言葉に耳を傾けるつもりもなく、冷徹に魔王の頭を真っ二つに斬る。
例え動けなくても魔王は魔王。今まで散々汚い手を使ってきた、例え頭だけであろうと何をしでかすかわからない。
魔王の顔は不気味な色の血飛沫を飛ばしながら、左右に片方ずつ跳ねた。
その様子を見て、さすがにもう何も出来まいと勇者も悟る。
「……終わった。これで世界は平和に」
勇者が城から出ようと、魔王の頭であった物から背を向けた……その時だった。
「そうだ…な……。これで…この…世界…は…平和に…なるだろう……」
「!!?」
気を緩めていたとはいえ、勇者は直ぐ様剣を構えて振り返った。
するとそこには、顔を真っ二つにされたというのに口を動かし喋っている魔王の姿。
いや、首を斬った時から既に喋ることは出来なかっただろう。何やら不思議な術で喋っているに違いない。
しかし、離れ離れになって尚一緒に口を動かす魔王の姿には勇者でさえもおぞましさを感じた。
「しつこいやつめ…!」
勇者が素早く剣を振ると真空波ができ、独りでに魔王の顔の両片を切り刻む。
一方魔王の顔は抵抗できるはずもなく、無惨な肉片と化す。
そして、それっきり魔王はピクリとも動かなくなった。
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