ゆうしゃは いえに おとされた! ▼

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勇者は魔王の死を念入りに確認すると、城を出ようと歩き出す。 魔王を倒した為か、城全体がしんと静まり返り、自らの足音が天井にまで響いた。 しかしそれが、なんだか魔王がいたときよりもいっそう不気味さを増していたようにも思えた。 「…………」 最後に勇者はもう一度魔王を見た。 そこにはやはり、今はもう動かないただの肉片が落ちているだけだった。 動くこととか再生することなどは起こるはずもない。 それを悟ったとたん、喜びと達成感が城の不気味さに打ち勝った。 そして勇者は地面に膝をつく。 かなり疲れていたのだ。 気を緩めると全身からどっと汗が吹き出るのを感じた。無理もない、今まで気を抜くことすら出来なかったのだ。 「長い長い……戦いだった……」 喜び、達成感、疲れ。 色々な感情が混ざり合い、最早何を考えているかが解らなくなる。 「……取り敢えず、帰ろう。私の故郷へ」 いつまでもこの城にいる必要はない、いや……いたくもない。 早く帰ろう。 そう思って立ち上がった時だった。
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