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カルマを不思議そうに見ている麗から離れ、カルマに腕をまわして麗を背にしヒソヒソと話す。
「……なんで聞いたのあんなこと」
「なにを言っている。勇者の情報源は村人だ」
いや、村人は村人かもしれないが、この世界の村人は異世界なんて知りません。
……って、ちょっと待てよ?
「え?じゃあ、今まで出会した人全員にあんなこと……」
「その通りだ」
俺は右手で額を押さえる。
たぶんここら辺全体にこんな話が広まっていくだろう。
「変なことを聞いてくる人がいる」と。
もしかしたら既に不審者扱いされているかも……。
「ねえ……」
「はぃ!」
最悪の事態を考えていた俺は、後ろから呼び掛けてくる麗の声にビックリしてしまう。
麗に体を背にしていた俺とカルマは、後ろを振り向いた。
するとそこには、真剣な眼差しでこちらを見つめる麗の姿が。
「何か隠してることがあったら私に言ってよ!誰にも言わないから!」
「うっ…!そ、それは…」
ほら、だから厄介事になるって言ったんだ。
だってあいつの真剣な顔なんて何年ぶりだ?それほど嫌なのか?幼馴染みの俺が隠し事していることが。
「隠し事?隠し事など私はして」
「少し黙ってて」
カルマの扱いにも慣れてきたな。
さて、麗にあんな顔されては教えないわけにはいかない。ほんと厄介だぜ……。
「……はぁ、わかったよ、全て話すわ。だけど1つだけ条件がある」
「え、なに?」
話してくれると分かった麗の顔は明るくなったのだが、条件というのが引っ掛かってまだいつも通りほど明るくはなれないみたいだ。
だが、こちらの条件は単純だ。
「これは本当に起こったことだからな。どんなことであろうと信じてくれ」
条件にしてまで忠告してくるのだから、かなり真剣なのだろうと麗は悟った。
そして、麗は条件を飲んで、俺はカルマについての知っていることを全て話した。
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