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「え?勇者?」
「うん、勇者」
「異世界って?」
「そのまんまの意味」
「………」
「………」
「カルマさんて凄いんだぁ!」
「え」
「む、まあな」
麗の単純さに、俺は目を丸くしてしまう。
そんな俺をほっといて、麗はカルマに夢中である。なんだかカルマのことが気に入ったようで、次々と質問を飛ばしていた。
いや、確かに信じろとは言ったが、少しぐらい疑ってもいいんじゃないか?
そう思いながら、俺は麗とカルマのやりとりに耳を傾けた。
「カルマさんて強いんですか?」
「自分では言いにくいが、まあ……」
「武器とかあるんですか?」
「あったのだが、不幸なことにこちらの世界に飛ばされた時に無くしてしまったのだ」
「向こうには仲間とかいたんですか?」
「……仲間、か」
なんだ?
カルマが麗のある質問を聞いた途端俯き出した。
「仲間……」
「あ……。な、なんか悪いこと聞いちゃった…?」
「いや……」
俯いているカルマの表情は何か悲しげだった。
するとカルマは重々しくこう告げた。
「1人だけ、いた」
「1人だけ……?」
「うむ」
「そうなんですか…」
…………。
なんだか空気が重い。
話も弾まなくなってしまった。
そんな空気に終止符を打つように、カルマは最後にこう付け加えた。
「まあ、昔の話だ」
その後、俺とカルマは麗と別れ家へと帰った。
掘り返してはいけないことだとは分かっていたが、カルマの仲間についてが少し気になって仕方がなかった。
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