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「ねえねえ、今日フウちゃんち行っていい?」
「なんでだよ」
朝。学校に着き自分の席に座ると、一足早く先に来ていた麗がそんな話を持ちかけてきた。
「……あいつら、ついに」
「家に行くって言ったらもうアレしか……」
周りの生徒がこちらをチラ見しながらコソコソと何かを話している。
このクラスでのこういうことにはもう慣れてしまったので、彼らを気にせず麗の話を聞くことにする。
「あの人のこともっと知りたいな~って」
昨日はあんな空気で終わったのに、コイツは懲りないなー。
それほど気に入ったのだろうか?
「……まあ、そのうち連れてきてやるよ」
そこでSHR始まりのチャイムが鳴る。
「ほら、早く席戻れよ」
「えー」
麗は納得しない表情を浮かべ渋々と自分の席へと戻っていった。この光景も2回目か。
麗が席に戻ってまもなく、先生が教室に入ってくる。
「えっとだな、今日はちょっとした話がある」
先生は入ってきていきなりそう言うと、生徒がざわざわと騒ぎ始める。
いつもは「起立!」から始まるので、何か大事なことなのだと生徒は感じ取っていたからだ。
「なんだろ?」「誰か亡くなったとか?」「誰か犯罪犯したとか?」
ろくなこと考えないなこのクラスは。俺はそう心で呟く。
「実はだな、なんと!」
先生の「なんと!」で、生徒の期待の眼差しが一気に先生に集まる。
「転校生が来ていますぞ!」
先生が声を張って言う。
先生と生徒の間に少しの間が空き、そして……
「マジで!?」「高校になって転校生ってそんなないよな!」「かわいこちゃん!?」「イケメン!?」「優等生!?」
生徒がワァァァ!!と歓声をあげる。
それを見て先生は満足そうな顔をしている。
しかしそんな中で、一人だけ素直に喜べない人がいた。
(転校生……?こんなタイミングで?いや、まさかな……)
それが俺、寺崎風馬だった。
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