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私が目醒めるとそこは、近くに小川が流れる土手だった。
季節は春。土手に沿って植えられた桜の木々は満開で、土手の緑と空の青と相まって何とも華やかな彩りに、私は心を奪われていた。
「ようやく目が醒めたのね、音々ちゃん」
唐突に私の視界に飛び込んで来たのは、驚いた事に私とそっくりな顔をした少女だった。
少女は肩にかかる程の綺麗な黒髪で、学生服を着ていた。
名前は『琴音(ことね)』だと言う。
「久し振りだね。音々ちゃんは忘れてしまっているかも知れないけど、私は覚えてるよ」
琴音は私の事を知っていると言う。
そして私も、琴音の事を知っていると言う。
確かに、懐かしい感じがする。
しかし、胸が何故か痛んで思い出せなかった。
「私は、音々ちゃんから生まれたの。だから、こんなにも似てるんだ。そして、私たちは過去にも出会っているんだよ」
琴音は、私の一部だと言う。
消滅と再生を繰り返し、こうして再び生まれた。
私には理解できなかった。
どうして琴音は何度も生まれて来るのかが。
「何故って、それは、それが私の生きる理由だからだよ」
琴音は、軟らかく笑った。
また会えて嬉しいと、軟らかく笑った。
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