砂の如く、言葉にならぬ声

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 私が目覚めるとそこは、砂漠だった。星々が空で踊る、夜の砂漠。    砂漠の所々には、人形があった。砂でできた、数多の人形。    目も鼻も口も無いそののっぺりとした人形は、かろうじて人の形をしていると判断できる程度で、作りモノだった。  何者なのか。考える私の目の前で、人形は弾けて砂漠と一体化してしまった。    そして、それと同時に私の中に声が聞こえた。    『私じゃないんだ』  一体、また一体と人形ができては崩れ、私に囁く。  喜怒哀楽。それぞれに繋がる声が私の中に響く。    しかし、誰一人をして残る事は無かった。私だけを残して。  時ばかりが過ぎた。もはや数えるのも止めていた。悲しくなるだけだったから。    そしてある時、十八体の人形が私を取り囲んでいる事に気付いた。    その人形は今までの人形と異なり、老若男女がはっきりと分かれていた。    そして、私を含めて十九体。皆が口々に言う。    『一人になる時が来た』と。  崩れ行く人形。統一されて行く意識。    『嬉しいね?』  『寂しいね?』  砂漠には、誰も居ない。
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