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私が目覚めるとそこは、遥か彼方まで広がる草原の真ん中だった。
見渡す限り広がる草原は地平線の先まで続き、夜空と交わっている。
夜空には満点の星空が広がり、数え切れない程の星々が明滅を繰り返していた。
「ねぇ、知ってる? あの星の瞬きは遥か昔の輝きで、今見えている星は既に滅んでしまっているかも知れないんだよ」
気付けば、音々の隣には少年が立っていた。
あどけなさが残っている少年は屈託の無い笑みを浮かべると、『紅葉(もみじ)』と名乗った。
「星はこんなに沢山有るけれど、実はもう滅んでいる星の光を僕たちは見ているかも知れないんだ。でも、僕らにはその違いが分からないんだ。・・・・・・なんだか寂しいよね」
紅葉は哀しそうに笑った。憂いを帯びた笑顔だった。
星と自分とを重ね合わせているのだろうか。
確かに、私たちと星々は似ているかも知れない。
美しく輝く星は知名度も高く良く見えるが、それ以外の星々はどうだろう。
例えいつの間にか消えてしまっていたとしても、誰も気付かないかも知れない。
何等星かも分からない名も無く見えない星のように、他人に埋もれてしまっていて見えない私は、誰かが認めてくれているのだろうか。
流れて消え行くあの星のように私が突然消えてしまったとしても、私がここに居たのだと知り得る人は居るのだろうか。
ただ、今は気付いた。
例え今見ている星が亡霊であったとしても、そこに星が確かにあったのだと私は知った事に。
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