2人が本棚に入れています
本棚に追加
「夜空に散らばる全ての星を知るなど、私には到底できない。それと同じく、この星に散らばる人々に密かに紛れるこの私など、知り得る人は僅かに過ぎない」
不思議そうに音々を見つめる紅葉。
安心させるように微笑みを浮かべる音々。
「ただ、全ての人が知るあの星でなく、ほんの僅かでも人の目に触れられるなら、私を知ってくれているのなら、その人の為に輝いても良いって思うんだ」
ぼうっと、紅葉は眩い光を帯び始めた。
心安らぐような、優しい光。
「そう思えるなら、あんなに遠くで輝く星もこんなに近くに感じられるよ。・・・・・・君のようにね」
頬を伝う涙を、抱き寄せた音々の肩が感じていた。
ひとりぼっちで消えてしまう前に、気付けてよ良かった。
私を見つけてくれて、ありがとう。
私は覚えているから。
「ありがとう」
霧散する光は天に召され、やがて夜空に溶けて行った。
そして、誰よりも眩く輝く流星がひとつ。
小さく手を振り、歩みだす。
誰もが皆孤独。
されど、自らを認めてくれる存在に気付いた時、こんなにも輝ける。
私が消える時には、誰の心の中に残像を残せるだろうか。
音々はその答えを知らない。
今宵も星々は隠し隠され、瞬く。
最初のコメントを投稿しよう!