一羽の鴉

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「…息がヤニ臭いのよ、このクズが。」 ころんは側にあったレモンを拾い上げ、青年の目の前で強く握った。レモンは潰れはしなかったが、指先に力を込めて飛ばしたピールオイルは青年の目を直撃した。 「ぐあっ…!」 目の痛みに怯んだ青年の隙をついて、取り落とした通学鞄を拾い上げ、元来た小道に向かって走り出した。 「この野郎、待ちやがれ!」 二人の青年がすぐに後を追い始める。 「野郎じゃないです、女の子ですー!」 通学鞄を鴉を抱いた手に持ち直し、狭い道を走る二人に焼き上げの魔法を放つ。一人のシャツに火が付いた。 「熱ちッ!この…熱チィッ!ちょ、け、消してくれ!」 「お前綿シャツかよ!消えねぇ、脱げよ!井戸まで戻るぞ!」 二人は慌てて井戸まで戻っていった。 ころんの制服は鴉の血が滲んでいた。急がなければ、失血死してしまう。ころんは痛む脇腹を押さえて家へと走った。
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