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さて、今日は語られた覚悟が本物なら、その北条が壁を壊しにいく日である。単純な破壊作業ならマッチョさんを連れていけばすぐさま解決なわけだが、残念。あいつが挑むのはきっと複雑で難解なタイプのやつ。
「──ふひぃ~、ごちそうさまでした」
午後三時。テレビでは冬将軍がどうのと騒いでいる時頃、丁重にわらび餅をいただいた死にたガールは、ふぅー、と長々一息ついてから切り出した。
「さ、てと。どうしますか?」
「そうだな……僕の課題だった『面白い携帯小説を探しておくこと』は完了したんだけど」
「ぜひ拝見したいです! ワクワク」
「ならトップページを赤外線で」
「って、違いますよ!」
「違う?」
「北条さんのことです。いろいろ言っても結局優しい一郎さんのことですから、気になってることだと思うのですが」
「僕は優しくなんかないよ。近年稀に見るインモラリストだ」
「またまた。謙遜は似合いませんよ。ニヤニヤ」
「僕は近年稀に見る謙遜の似合う男だぞ」
「なら謙(へりくだ)ってみてください」
「……それは無茶振りだよ」
「答えは出ました。咄嗟に謙れない一郎さんは謙遜家ではないのです。シメシメ」
「悔しい。なんか悔しい」
まさか彼女に言い包められてしまう日がくるとは。
まあ相手を敬って自分の言動を控えめになんかしてたら、到底あまのじゃくとしてやっていけないから死にたガールの言い分が正しいんだけど。
──あ、意味のない嘘をついてしまった。まあいいか。
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