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「ここだよ」
ナース帽を浮かせる程のくるくるパーマの筋肉兵士。咄嗟に浮かんだニックネーム、"マッチョさん"が案内してくれた315号室。
そこは数台の無人ベッドが軒を連ねる、団体用大部屋だった。
「たぶん一ヶ月くらいの検査入院になるから」
彼女は僕がこれからお世話になるベッドを乱雑に整えながら大変簡素に説明し、忙しいからと部屋を後にする。
僕の性格上、
『病院食だからって残しちゃダメよ』
なんて言われると十中八九食べたくてもあえて残してしまうため良かったのだけど。
「クスクス、やったわ。年の近そうなお隣さんがやって来たわ」
そういえば『早く退院してね』と言われると僕はどうするのだろうかなんて分かりきった疑問を抱いて自分に呆れていると、不意に乳白色のカーテンレールで覆われた隣のベッドから、そんな独り言が聞こえてきた。
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