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入院したのも初めてだったが、実際に"クスクス"をこうもはっきり言葉にして笑う人間に、僕はこれまで触れたことがなかった。
どうせこれから学校の勉強が懐かしいと思えるほど暇になるのは見え透いていたし、あわよくば友達になれないかと耳を澄ませてみる。
「ああ、だけどこんなエブリデイシックインベッドな私に、友達なんて夢のような存在ができるのかしら。ドヨーン」
時折顔を出す擬音語はなんなのだろう?
「……そうよ。どうせ長くない命。いずれ切れる繋がりなら、最初から結ばないほうが得策ね。ションボリ」
どうやら彼女の病は重いらしい。そりゃ独り言も変になるわけだ。
いや、その理屈はおかしいか。
……それにしても、この胸の底から込み上げてくる思いはなんだ?
何かを期待しているようにそわそわと。何かを願っているように沸々と。気持ちが落ち着かない。
「ああ、こんな人生ならいっそ────」
けれどそこまで聴いて、目眩く自問に確かな答えが出た。それまでの不明を眩く照らす明答。
僕は側にあったリモコンを使ってベッドを起こし、バサリとカーテンを開けながらニヒルに笑って尋ねる。
「死にたいのかい?」
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