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そうか。
このドロドロでグチャクチャした形容し難い感情がそうなのか。
これが────恋だ。
「おい、キミ」
「はい?」
彼女は振り向き不思議そうに首を捻る。たぶんこのときの僕の顔は、実験対象を見つけたマッドサイエンティストと相違なかったと思う。
「名前は?」
「あっ、これはどうも初めまして。私の名前は──」
「いや、いい。今日からキミは“死にたガール”だ」
「どんなネーミングセンスですか!? ガーン!」
中のいろいろが飛び出そうなくらいに見開かれる目。なかなかにおもしろくなりそうだ。
「なあ、死にたガール。キミは友達が欲しかったんだろ?」
死にたガールは恥ずかしそうに俯き、
「カクン」
僅か頬を赤く染め、小さく首を縦に振った。
後に否定する。
「でももういいんです。自問自答して突き詰めた結果、どうせ友達なんて出来てもすぐにお別れする運命なんで」
「そんな運命、この僕が反逆してやる」
「えっ……?」
無事な方の手で拳を作り、胸を一叩き。
「だから死にたガール。今から僕とキミは友達だ」
我ながら、良くこんな無責任で無鉄砲なことを宣(のたま)えたと思う。
でも言えたのだから、それは紛れもない事実だ。
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